こんにちは!Freewillトータルエデュケーションの井口です!
今回はニクラス・ルーマン『社会の教育システム』をとりあげます。『教育の社会学』(有斐閣アルマ、2010年)の参考文献からとりあげました。
【概要】
ニクラス・ルーマンはドイツを代表する社会学者で、
20世紀の社会学者の中でも5本の指に入るほど大きな影響力を持ちました。
特に、彼の「社会システム論」は社会全体を統一の見方で俯瞰できる、
とても珍しい理論です。
社会システム論は、生命システムからヒントを得ており、
社会全体を一つの細胞のごとく捉え、
その動きを分析できる、切れ味鋭い理論です。
ルーマンはその理論を武器に、政治・宗教・経済といった、
社会の各部分にメスを入れていく著作を次々と刊行するのですが、
本書はそのメスを教育にいれて書かれたものです。
1. 教育システムの位置付け
ルーマンの著作は非常に難解な専門用語に溢れ、
(「作動的閉鎖性」「構造連結」「構造呼応」「媒体/形式」「内部転写」・・・)
とても読みにくかったです。
今回の記事では極力そう言った用語を省きます。
ただ、壮大な社会システム論を教育に適用した本書を理解するためには、
教育システムの前に「社会システム」とは何なのかを考えなければいけません。
①世界の中の社会システム
ルーマンはこの世界を捉えるときに、
①機械
②生命
③意識
④コミュニケーション
の四つに分けて分析をします。
そして、④コミュニケーションのことを「社会システム」と呼びます。

ニクラス・ルーマン (1927年12月8日 - 1998年11月6日)
②各システムの独立性
ルーマンによれば①~④のシステムは、お互いが混ざり合わず、各々独立しています。
・・・?良くわかりません。
例えば、我々は脳内のシナプスの動きを意識できません。それを上の観点から言い換えると、人間の意識(意識システム)が脳内活動という自分の生命活動(生命システム)の動きを完全には把握してないということを示しています。意識システムと生命システムはお互いに関係しながらも、独立しているということです。
また別の例をだすと、我々は他人とコミュニケーションを取る時、
相手が何を考えているのかは完全にはわかりません。
相手の意識(意識システム)が完全にはわからずとも、
コミュニケーション(社会システム)は成立します。意識システムと社会システムはお互いに関係しながらも、独立しています。
③システムと複雑性の縮減
またルーマンは次に、各システム①~④の内部は極めて複雑であることを確認します。
例えば、意識状態は複雑ですし、身体の動きである生命状態も複雑ですね。
各システムはお互いに関わる時には、その複雑性をある程度無視して関わります。
これは「複雑性の縮減」と呼びます。
これもまた、なんのことだか、という感じです。
そもそもルーマンのシステムのアイデアは②生命システムからきていますが、
「複雑性の縮減」は生命システムであればわかりやすい話です。
例えば、さまざまな波長がある電磁波のうち、
人間の視覚は可視光線しかキャッチしないようになっています。
これは生命システムがその外部の複雑性(電磁波の多様な波長)をある程度無視していることを指します。
そしてルーマンはこのアイデアを他のシステムにも応用しますので、
当然社会システム(コミュニケーション)でもこのような複雑性の縮減が起きているということになります。
例えば、ホームセンターを経営をしていて、目の前に消費者がいたとき、「この消費者はDIYをするためにこの商品を買うのではなく、誰かに憎しみをいだき、自作銃を作るつもりでこの商品を買うのでは」と気にしすぎていたら、商売はできません。
買い手がどんな人であれば、お金を払ってくれれば取引を成立させなければ商売できません。これは、極めて複雑な相手の意識状態(③意識システム)や(感情も含む)生命状態(②生命システム)を度外視し、売買取引という経済的なコミュニケーション(④社会システム)が成立している例です。
このように①~④の各システムは、お互いに関わり合いながらも、お互いの複雑性を極めて単純化して、自らの作動を続けていきます。
④社会システムの種類
さて、上では経済の例を挙げましたが、
社会システム=コミュニケーションには経済以外にも種類があります。
ルーマンが挙げる社会システムは
・政治システム
・経済システム
・宗教システム
・学問システム
・教育システム
といったものです。
ここでやっと教育システムがでてきました。
社会システムがコミュニケーションのことだったことを踏まえると、
その一部である「教育システム」というのは教育制度のことを指しているのではなく、
教育にまつわるコミュニケーションを指しているということですね。
当然教育システムも、社会システムの一部ですので、
上に見たように、他のシステムとは独立しており、
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